オーディオは男の趣味であるからこそ(その13)
「菅野録音の神髄」での江崎友淑氏の話のなかに、瀬川先生、という言葉が出てきた。
江崎氏が若かったころの話をされた。
どこかのショールームで瀬川先生が話されたことだった。
「どんなに狭くてもひとりで音楽を聴ける空間をもちなさい」、
そういう趣旨のことだった。
どんなに広くてもリビングルームで聴いてはだめだ、と。
来場者から「なぜですか」と問われ、
「音楽に感動して涙をながしているところを家族にみられてたまるか」と。
瀬川先生もそうだったのか。
そういう音楽の聴き方(接し方)をされてきていたんだ、ときいていてうれしかった。
赤の他人ではなく、家族だろ、涙をみせてもいいじゃないか。
それはそれでいいし、そういう聴き方(接し方)もあろう。
けれど男がひとりで音楽に涙する空間こそが聖域であって、
それは城とは違う。