日本のオーディオ、これから(NIRO Nakamichiの復活・その4)
たぶんいまも同じことが行われていると思うが、
オーディオ評論家の元には、メーカーから試作品が持ち込まれることがある。
完成品を聴いて、その評価をするだけがオーディオ評論家の仕事ではなく、
試作品を聴いて、という仕事もある。
そこでのオーディオ評論家とメーカーの人たちとの会話の内容が具体的に漏れてくることはないが、
まったく伝わってこないわけではない。
たいてい気になる点を、オーディオ評論家は指摘する。
メーカーの人は、後日、直して持って来ます、といって帰る。
数日か一週間ほどして、同じメーカーの人が、手直しした、という試作品を持ち込む。
気になった点が、これで直っていることは、まれである、という話は、よく聞いている。
いっしょに試作品の音を聴いて、オーディオ評論家の指摘をメモしていっても、
肝心の担当者が音をよく聴いてなかったり、よくわかってなかったりするから、
こんなやりとりが生じてしまう。
この話をしてくれるオーディオ評論家の人たちも、
ダメなメーカーの名前をいったりはしないが、優秀なメーカーの名前、
それに担当者の名前は話してくれる。
瀬川先生から直接きいた話ではないが、
直接きいた友人が私にはなしてくれたところによると、
デンオンのU氏のことは褒められていた、ということだった。
ここがダメだ、と指摘すると、すぐに手直しした試作品を早いうちに再度持ち込む。
きちんと音を聴いて、音がわかっている人だから、
瀬川先生の指摘が理解できるからこその手直しである。
残念ながら、こういう人は少ない。
私が井上先生からきいたなかでは、中道仁郎氏がそうである。