Date: 9月 25th, 2017
Cate: 瀬川冬樹
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375+537-500

375+537-500、
こんなふうに書いておくと、
若い人は、何のことだろう……、と首をかしげるかもしれない。

小学生の算数の問題ではない。
JBLのコンプレッションドライバーとホーンの組合せの型番である。

537-500は、のちのHL88である。
日本では蜂の巣とも呼ばれているホーンである。

HL88、蜂の巣ホーンといったほうがとおりがいいのは分っている。
それでも、この数式のような型番(375+537-500)が、
このドライバーとホーンの組合せにしっくりくると感じるのは、憧れからだろうか。

私がオーディオに興味をもちはじめたころには、
537-500という型番は消えていた。HL88である。
Hはホーン(horn)、Lはレンズ(lens)をあらわしている。

無線と実験の1966年12月臨時増刊に、瀬川先生が書かれている。
     *
 中心をなすものはJ.B.Lansingの375ドライバー・ユニットに537-500ホーンに組み合わせたスコーカーで、中音に関しては目下のところ非常に満足している。375ユニットは、ボイスコイル径が4インチ(約10cm)、磁束密度20000ガウス以上という、漬物石の如き超大型のユニットで、ホーンをつけると一人では持ち上げるのに骨がおれる。
 JBLのスピーカーについては、鋭いとか、パンチがきいたとか、鮮明とか、およそ柔らかさ繊細さとは縁の無いような形容詞が定評で、そのJBLの最大級のユニットを、6畳の和室に持ちこんだ例を他に知らないから、友人たちの意見を聞いたりもしてずいぶんためらったのだが、これより少し先に購入したLE175DLHの良さを信じて思い切って大枚を投じてみた。サンスイにオーダーしてからも暑いさ中を家に運んで鳴らすまでのいきさつはここではふれないが、ともかく小生にとって最大の買い物であり、失敗したら元も子もありはしない。音が出るまでの気持といったらなかった。
 荒い音になりはしないか、どぎつく、鋭い音だったらどうしようなどという心配も杞憂に過ぎて、豊麗で繊細で、しかも強靭な底力を感じさせて、音の形がえもいわれず見事である。弦がどうの声がどうのというような点はもはや全く問題でないが、一例をあげるなら、ピアノの激しい打鍵音でいくら音量を上げても、くっきりと何の雑音もともなわずに再現する。内外を通じて、いままでにこれほど満足したスピーカーは他に無い。……まあ惚れた人間のほうことだから話半分に聞いて頂きたいが、今日まで当家でお聴き頂いた友人知人諸氏がみな、JBLがこんなに柔らかで繊細に鳴るのをはじめて聴いたと、口を揃えて言われるところをみると、あながち小生のひとりよがりでもなさそうに思う。
     *
1966年8月に、瀬川先生の六畳間のリスニングルームに、
375+537-500はおさまっている。

山水電気扱いで、日本で最初に375+537-500を購入されたのは、瀬川先生である。
六畳間に、このホーンとドライバーを置くと、2441+2397とは違う存在感がある。
実際に、いま目の前に375+537-500がある

私のモノではなく、預かりものなのだが、
ハークネスの上に置いて眺めている。

375+537-500の下には、175DLHがある。
375+537-500の横には、馬蹄型の金具がついた075がある(これも預かりもの)。
それからスロートアダプターの2329ものっけている。
LE85のダイアフラムが木箱に入っているのもある。
Ampex-Lansingの800Hzのネットワークも、
エレクトロボイスの1828Cも置いている。

ハークネスの手前には、2441+2397がある。

瀬川先生が1966年ごろ、毎日眺められていた光景に近くなってきた。

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