オーディオとバイアス(ブラインドフォールドテスト・その3)
(その2)の最後に、
聴く前の思い込み、バイアスは、
そこで鳴った音がいい音であれば、いつのまにか消えてしまっている、
と書いた。
聴く前の思い込みが、そこで鳴った音で消え去ってからが、
そこで鳴った音、その音を鳴らしたオーディオ機器の音を評価することができる、ともいえる。
そう思いながらも、まったく反対のことも思っている。
昔からいわれ続けているのは、
可能性の高いオーディオ機器、能力が高いオーディオ機器ほど、
ポンと置いて接続しただけでいい音が出ることは、まずない、ということ。
スピーカーは、特にそうである。
優れたスピーカーであればあるほど、そうともいえる。
そういうスピーカーであっても、ポンと置いて……、という例もまた昔からよくいわれている。
だからこそ、使いこなしが大事だ、と何度も多くの人がいい続けてきているわけだ。
ポンと置いて接いで鳴らして、ひどい音が鳴ってきた。
それですぐ(文字通りのすぐ、である)に、そのスピーカーを手放した人も知っている。
そこまで極端でなくとも、しばらく鳴らしてもいい音にならないから、と手放す。
そういう人もいれば、絶対にいい音で鳴ってくれるはずだ、という思い込みで、
そのスピーカーと正面から取り組む人もいる。
長島先生とジェンセンG610Bとの関係は、まさにそうである。
他人からすれば執念といえるほどの思い込みによって、
そのスピーカーが、他のスピーカーでは絶対に鳴らし得ない音を鳴らすようになる。
強烈なバイアスが、オーディオには必要でもある。