シンプルであるために(ミニマルなシステム・その22)
1970年の終りから1980年代にかけて登場してきた真空管アンプメーカー、
それもアメリカのメーカーのいくつかは、
ラインアンプを真空管の一段増幅で構成しているものがあった。
(その21)で書いた、FET一石のゼロバイアスのヘッドアンプ的な構成のラインアンプ。
どちらもこれ以上、部品点数を減らすことはできない、という回路構成。
こちらに関しても、シンプルな回路ゆえに音の劣化が少ない、
つまり音がいい、という人がやはりいる。
いいたいところはわからなくもないが、
真空管一段構成のラインアンプも、ほんとうにシンプルといえるのか。
その前に考えたいのは、FET一石のヘッドアンプも、
真空管一段増幅のラインアンプも、入力と出力の位相が反転している、ということ。
つまりどちらも逆相アンプである。
システム全体が正相であるか逆相であるか、
そのことによる音の違いははっきりとある。
本来的にはプログラムソースを含めての、システム全体が正相であるべきで、
録音によっては逆相のものもあるし、
部分的に逆相(マルチマイクロフォン録音で、一部のマイクが逆相)もあるし、
録音そのものは正相であっても、LP、CDが逆相になっていることもある。
トータルの位相管理は、1960年代からいわれていることである。
マランツの管球式パワーアンプModel 9には、だから位相反転スイッチが設けられている。
このシステム全体の位相管理での正相・逆相を、
何度説明しても、左右チャンネルが逆相になっていることと混同する人がいる。
あくまでも左右チャンネルは同相で鳴っていての、
その上でのシステム全体の正相・逆相のことである。