丁寧な使いこなし(その1)
ある時期から、JR東日本は電車を発車させる際に
「ドアを閉めさせていただきます」とアナウンスするようになっていた。
それまでの「ドア、閉まります」「ドア、閉めます」から、
「ドアを閉めさせていただきます」への変更である。
気持悪いな、とまず感じた。
しばらくして気づいたのは、
「ドアを閉めさせていただきます」になってから、
朝夕のラッシュ時に、駅員が何度もくり返していうことが増えていった。
ドアが閉まりかけようとしているのに、無理に乗ろうとする人が続くからのようだった。
駅のアナウンスは、ある種BGMのようなものかもしれないが、
駅の利用者は、意外に聞いている、というか、意識下になんらかの影響を与えているのか、
少なくとも以前のアナウンスのころは、
これほどくり返しいわれることは、ほとんどなかった。
正確に何回くり返されたのかをカウントしたわけではないが、
あきらかに「ドアを閉めさせていただきます」は、何度も何度も耳にするようななった。
それが昨年、もとの「ドアを閉めます」「ドアが閉まります」に戻った。
朝夕のラッシュ時にも、このアナウンスがくり返されることは、はっきりと減っている。
もちろんそれでも強引に乗り込もうとする人はいるけれど、
「ドアを閉めさせていただきます」のころは、そうでない人までが、
ドアを閉めさせまいとして乗っていたのではないだろうか。
「ドアを閉めさていただきます」はへりくだった言い方だ。
そのことを乗客は感じとっている。
決して丁寧な言い方ではない。
JR東日本は、ある時期、勘違いしていた、といえる。
でも、勘違いしていたことに気づいた。