ホーン今昔物語(その3)
アルテックの定指向性ホーン(マンタレーホーン)のことを知ったのは、
604-8Hを搭載した620B Monitorの登場によって、だった。
アルテックの同軸型ユニット604は、一貫してマルチセルラホーンを中高域に採用していた。
604-8Gになってウーファーのフレーム形状が変更になっても、
ホーンに関しては同じままだったのが、604-8Hで大きく変化した。
マルチセルラホーンでは、ひとつひとつのホーンの開口部は大きくない。
小さなホーンの集合体といえるマルチセルラホーンだから、
ホーンが大口を開けているという印象はない。
604-8H以降採用のマンタレーホーンは、ひとつのホーンである。
仕切り板も何もないから、開口部がそのまま大口を開けているようにも見える。
しかもホーンの開口部が、
それまでのマルチセルラホーンよりも大きくなっているから、なおさらだ。
それにマンタレーホーンの開口部はフラットである。
マルチセルラホーンでは両サイドの開口部は角度がついているから、
ユニット全体を斜めからみたとき、
マルチセルラホーンは立体的であり、マンタレーホーンは平面的でもある。
どちらが音がいいのか、ということではなく、
ユニットを眺めた時の印象がずいぶん違ってきたことに、
ホーンに新しい時代が訪れつつある気配を、多くの人が感じとっていただろう。
それに604-8Hはネットワークも、大きな変更が加えられている。
定指向性ホーンは、従来のホーンそのままのネットワークでは良さを活かせない面がある。
それに加えて、604-8Hでは2ウェイにも関わらず、3ウェイ的なレベルコントロールを可能にしている。
604-8Hから少し遅れて、単体のホーンとしてもマンタレー型が登場したことを知った。