トーンコントロール(その1)
私がオーディオに興味を持ち始めたころぐらいから、
国産のアンプにはトーンコントロールをバイパスするスイッチがつくようになっていた。
トーンコントロールをバイパスすれば、
それだけ信号経路はシンプルになり、音の鮮度はたいていの場合、高くなる。
トーンコントロールの有用さはわかっていたし、
瀬川先生がよく書かれていた。
なのでバイパスすることもあれば、積極的に使うことも多かった。
トーンコントロールは必要なのだろうか。
瀬川先生は、そういわれていた。
確かにそうだ、とうなずける。
一方で長島先生は、トーンコントロールでいじれるのは音の表面的なところであり、
本質的な性格は変化しない、といったことをいわれていた。
これも、確かにそうだ、とうなずける。
まるでトーンコントロールにポリシーがないように思われるだろうが、
自分で使ってみると、瀬川先生のいわれることも長島先生がいわれることも、
わかるとしかいいようがない。
これも何度も書いていることだが、どんな方式にもメリットとデメリットがあるわけで、
そこをどう理解して使うか、でしかない。
それでもトーンコントロールを使わなくなってきたのは確かである。
まずトーンコントロールが省かれるアンプが、1980年ごろから増えてきた。
まずコントロールアンプから省かれ、
プリメインアンプからも省かれるようになってきた。
そうなると使いたくともトーンコントロールがないのだから、どうしようもない。
トーンコントロールは不要になってきたのだろうか。
私にとって必要なトーンコントロールは? ということをだから考えてみた。
一般的な低音と高音だけの、2バンドのトーンコントロールは正直、あまり必要性を感じない。
私にとって必要なトーンコントロールは、中音もコントロールできる、
3バンドのトーンコントロールである。
このことはマークレビンソンのLNP2を触ったことのある方ならば、わかってくれるだろうか。
マーク・レヴィンソンがJC2にトーンコントロールをもうけなかったのは、
2バンドならば不要と考えたためではないだろうか……、と勝手に妄想するくらいに、
LNP2のトーンコントロールの中音のツマミは動かしてみると、その有難みがわかる。