オーディオは男の趣味であるからこそ(その3)
瀬川先生の「コンポーネントステレオをすすめ」は1970年代の本であり、
そこに書かれていることは、そのころの話であるわけだ。
約40年前のオープンリールデッキ、
それも30万円というのはたしかにかなりのぜいたくなテープデッキである。
HI-FI STEREO GUIDEの’74-’75年度版で、2トラ38の30万円くらいの製品となると、
アカイのGX400D PRO(275,000円)、ソニーのTC9000F-2(250,000円)、
ティアックのA7400(298,000円)、ルボックスのHS77 MKIII(320,000円)ぐらいしかなかった。
国産のオープンリールデッキの高級機でも15万円前後が主流である。
’76-’77年度版をみると、30万円くらいの2トラ38機は増えている。
それでも30万円のモデルは、ぜいたくなテープデッキであることにかわりはない。
スピーカーもなければアンプもアナログプレーヤーもなく、
オープンリールデッキとヘッドフォンだけ、というスタイル(スタート)は、
現在では、ポータブルオーディオにヘッドフォン(イヤフォン)が近いようにみえる。
ポータブルオーディオもヘッドフォン(イヤフォン)も、そうとうに高価なモノがある。
スピーカーをあえて持たず、ヘッドフォン(イヤフォン)だけで楽しむ人たちがいる。
40年前のオープンリールデッキが、ポータブルオーディオにかわっただけには、
私の目には見えない。
40年前のオープンリールデッキとヘッドフォンの大学生は、
次にアンプ、それからスピーカー、アナログプレーヤーと買い足していったはずだからだ。
アンプもスピーカーもアナログプレーヤーも、
約40年前の30万円のオープンリールデッキと同等のモノを選び、
それを目標にアルバイトでかせいでいったはずだ。
オープンリールデッキとヘッドフォンの世界だけで完結していない。