真空管アンプの存在(その20)
スピーカーユニットに、+(プラス)の信号が加わると、
振動板が前に動こうとすると、フレームがその反発を受けとめる。
大砲から弾が発射されるとき、砲身が後ろに下がるのと同じで、
振動板が前に動く(作用)には、かならず反作用が発生する。
その反作用はフレームを振動させ、振動板が前に動き出して音を放出するよりも先に、
振動板まわりのフレームから音を出している。
その振動は、エンクロージュアにも伝わり、側板、リアバッフル、天板、底板を鳴らす。
フレームから先に音が出ることは、1980年代に、ダイヤトーンが測定で捉えている。
その反作用は、振動板のマスに比例する。
ドーム型やコーン型のダイレクトラジエーターよりも、
コンプレッションドライバーのほうが大きいだろう。
平面型のスピーカーユニットでも、日本とアメリカでは異ることを書いた。
薄いフィルム状の振動板だと、日本のメーカーが採用したハニカム振動板よりも、
磁気回路、フレームに与える反作用が相当に小さいのは、容易に想像がつく。
トランジェント特性のよさを追求していても、コンプレッションドライバーとでは、
もちろん、フィルム状振動板の方が圧倒的に小さいだろう。
フレームが受ける反作用が小さければ、
フレームを介してエンクロージュアに伝わる振動も比例して減っていく。
このことは、スピーカーシステムとしてまとめられたときに、
大きな違いとして形態に現われてくる。