真空管アンプの存在(その19)
実は、一度、ある真空管アンプの輸入商社の担当の方に訊いたことがある。
「ノイズの多さを、設計者は気にしないのか」と。
返ってきた答えは、予想していたとおりのもので、
「彼らが使っているスピーカーは能率が低いですから、気にならないんです」と。
ひとつことわっておくが、この時代、CDはまだ登場していなくて、
アナログディスクが、メインのプログラムソースだったため、
ここで言うノイズは、フォノイコライザーアンプとラインアンプのノイズの加算されたものである。
その答えも理解できなくはない。
ノイズが質や出方が同じで、SN比だけが異る(そんなことはありえないが)のならば、
スピーカーの能率次第で、気にならなくなるだろう。
しかし、前述したように、楽音に粒子の小さな砂が混じっているようなノイズの出方では、
スピーカーの能率の高低で、気にならなくなるということはない。
当時は、それ以上、訊かなかったし、自分なりの結論を出すこともできなかったが、
いまは、スピーカーの能率よりも、スピーカーの形態そのものの違いによるものだと思っている。