「音楽性」とは(映画性というだろうか・その10)
テレビと映画の違いは、
映画は銀幕とも呼ばれるスクリーンに映写機によって映し出されるところにある。
つまり映画は、スクリーンに投影された反射像である。
サイズがどちらも100インチであったとしても、
液晶ディスプレイとスクリーンとでは、この点が決定的に違う。
昔、テレビはいまのように液晶ディスプレイではなかった。
ブラウン管だった。
だからテレビというモノ自体が、ひとつの箱だった。
テレビが登場したばかりのころ、
テレビの箱の中に人がいて、演じていると思っていた、というシーンが、
そのころを描いた映画やテレビドラマでもある。
ほんとうにそんなことがあったのだろうか、と思う。
すでに映画はあったのだから、そんなことを思う人がいるのか、と、
その時代を知らない私などは、そんなふうに捉えるわけだが、
でも、このことは映画とテレビの違いを、端的に表している。
つまりテレビは、家庭に入りこんできた。
つまり日常に入りこんできた。
日常の空間の中にテレビの空間(世界)がある。
映画館に行き、入場料を払って、暗い空間で観る映画と、
スイッチを入れてチャンネルを合せるだけで、居間で見れるテレビの世界とでは、
日常の生活(世界)との連続性を感じさせる点においての違いがある。
もしテレビが存在しなかったら、
ドキュメンタリーという手法はかなり違ったものになっていたかもしれない。