「いい音を身近に」(音楽室のオーディオ・その1)
「いい音を身近に」というタイトルで書き始めたのは、
ある知人が、同じテーマで書いて公開しましょう、といってきたことがきっかけだ。
知人はステレオサウンドの特集のタイトルである「いい音を身近に」を選んだ。
2010年春のことだ。
知人は適当な組合せ例を書いて、それで終り。
いまではそれも見られなくなっている。
いつもの知人のやることだ。
私は、またか、と思うだけで、
「いい音を身近に」というタイトルは、考えて書いてみて面白い、と思っている。
私が子供のころ、テレビは一家に一台だった。
高級品だったからだ。
それが一人一台に変っていった。
音楽を聴く装置も、同じだった、というか、
テレビよりも普及率は低かった。
それがウォークマンの登場により、テレビ同様、一人一台といえるくらいになっている。
でも私が子供だったころ、ステレオと呼ばれていたモノは、
一般家庭には、それほど普及していなかった。
その頃の身近なステレオ(オーディオではなく、ステレオのほうが合っている)は、
中学校の音楽室に備えつけてあった装置である。
私が通っていた小学校には、音楽室はなかった(と記憶している)。
中学校にはあった。
そこには、ビクターのステレオがあった。
スピーカーはバックロードホーンのFB5だった。
プリメインアンプとプレーヤーもビクターの製品だった。
FB5は壁に取りつけられていた。床からけっこうな高さまで持ち上げられていた。
普及クラスのステレオではあっても、
単品コンポーネントとして販売されていたモノの組合せであった。
学校にきちんと鳴らすことができる人がいれば、
そこそこの音を鳴らしてくれただろう、とは思う。
けれど、実際にはそうではなかった。
音楽の授業で、レコードを聴くくらいで、
中学生活の三年間で何度聴いたかといえば、数回くらいである。