自走式プレーヤーの領域(その1)
いまから30数年前、
当時ステレオサウンドの弟分にあたる月刊誌サウンドボーイの表紙に、
レコード盤の上におかれたフォルクスワーゲンのTYPE 2というプラモデルが使われていた。
この表紙だけでは、どういうことなのかすぐにはわからなかったけれど、
この製品はサウンドワゴンといって、ボディ下部にカートリッジ、
内部にアンプとスピーカーを備えている、いわば自走式のアナログプレーヤーだった。
通常のアナログプレーヤー(当時はレコードプレーヤー)は、
レコードを回転させる。
サウンドワゴンは静止したレコード盤面を、再生しながら走っていく。
確かサウンドボーイの表紙のサウンドワゴンは、
表紙として見映えするように、他のプラモデルのパーツを流用していたはずだ。
面白いモノが出た、と誰もが思ったはずだ。
手に入れた人も少なくないだろう。
手に入れなくとも、記憶に残っている人は多いはずだ。
サウンドワゴン。
本格的なオーディオ機器というわけではないこともあって、
関心を持続していたわけではなかった。
それに製造中止になった、ということも聞いていた。
それから、どのくらい経っただろうか、サウンドワゴンが復活した、というニュースをどこかで見た。
でも、それほど熱心に読んだわけでもなく、また忘れてしまっていた。
そのサウンドワゴンのことを思い出しているのは、ある記事を読んだからだ。
「逆(回)転の発想! レコードの上を回って再生するスピーカー」というタイトルがつけられていた。
この記事で使われている写真は、レコードの上に四角い箱が乗っている。
記事を読んでもらえばすぐにわかるが、サウンドワゴンと同じモノの紹介である。
この記事の執筆者がどの世代の人なのか知らないが、
少なくともサウンドワゴンを知らない世代なのは間違いないだろう。
それに、過去に同じような物がなかったかを調べもしない人なのだろう。
編集部も、そのへんのチェックをせずに、おまかせで記事を依頼しているのだろう。
こういうことを、DeNAのキュレーションサイトが問題になった直後にやってしまう。
また「インターネットはくずだね」と思っている人を喜ばせることになる。
上記記事で紹介されているモノは45回転にも対応できる、とある。
サウンドワゴンは33 1/3回転のみであるという違いはある。
サウンドワゴンは名前を、レコードランナーに変えて現行製品である。
なつかしいな、とまず思った。
それから考えたのは、自走式のアナログプレーヤーの可能性についてである。