自走式プレーヤーの領域(その2)
プロ用機器としてのCDプレーヤーは、ソニーのCDP5000、デンオンのDN3000Fが早かった。
CD登場の翌年1983年のことだ。
どちらもモデルも一部改良され、CDP5000S、DN3000FCとなり、
コンシューマー用として発売になった。
価格はどちらも180万円だった。
CDP5000はメカニズムは、同じプロ用機器であるデンオンとも、
他のコンシューマー用機器とも違っていた。
ディスクが回転し、ピックアップが移動しながらトレースしていくのだが、
ソニーはディスクが回転しながら移動する方式を採っていた。
つまりピックアップは固定された位置から動かずに、
逆転の発想でディスクが移動することでトレースを可能にしている。
アナログプレーヤーのピックアップと違い、
CDプレーヤーのピックアップにはサーボ技術が不可欠である。
ピックアップ部には複数のサーボがかけられているため、その分配線の数も、
モーターへの配線よりも多い。
配線の数の多いピックアップを動かすよりも、
配線の数の少ないディスク(モーター)を動かした方が合理的という考えもできる。
ソニーはそれをやっている。
CDP5000の音は、きわめて安定感があった。
この安定感だけでも、このCDプレーヤーが欲しい、と一瞬でも思った。
ただ180万円という価格と、通常のCDプレーヤーとは大きく異る形態に、手は出せなかった。
それでも、いまも記憶に残る音を聴かせてくれた。
頭で考えればディスクを移動させることは、なんだか不安定な要素になりそうな気もするのだが、
実際の音は違っていた。
ということは自走式プレーヤーも、そうなのかもしれない。