Date: 10月 24th, 2016
Cate: 朦朧体
Tags:

ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その69)

「オーディオあとらんだむ」に登場するM氏は、
ステレオサウンド 67号「素晴らしき仲間たち」にも登場されている。

四回目となる「素晴らしき仲間たち」はエレクトロボイスの30Wユーザーである。
この記事の終りに、30Wを搭載しているパトリシアン800のユーザーが四人登場されている。
その中のひとりがM氏、前橋武氏である。

顔写真も載っている。
この人だったのだ、と気づいた。

瀬川先生が熊本のオーディオ店で定期的にやられていたオーディオ・ティーチ・イン。
私も毎回通っていたが、M氏もほぼ毎回来られていた。
ひとり和服姿だったし、髪形も独特だったから、よく憶えている。

67号にThe GoldとSG520のことを書かれている。
もちろんパトリシアン800とトーレンスのリファレンスのことも書かれているが、
瀬川先生の「オーディオあとらんだむ」を補完することが、ここにはある。
     *
「76cmウーファーで棚の人形が揺れて落ちます」と言う青木周三さんの言葉に魅せられてテクニカの限定販売の時にとびついた。だが足かけ2年に及ぶ苦汁を味わうことになる。始め嘗ての銘器Mアンプで鳴らした。出て来た音の貧弱なることまるで昔の電蓄である。ウーファーが全く動かないのである。以来現在入手可能な国産海外の著名な製品のほとんどを次から次へと試聴していった。マーク・レビンソンを始めとして新しい所ではMC2500、サイテーションXX、クレルなどがある。結局メインはスモのザ・ゴールドに落着いた。ウーファーをグンと駆動するバイタリティは文字通りのスモー(相撲)だ。然しプリが中々無いのである。最早K店の片隅の埃かぶりの下取りSG520しかなかった。だが突然目も覚める様な鮮かな音が出て来た。欣喜雀躍! テラーク版サンサーンス3番のオルガンの重低音が素晴らしい。鬼太鼓座の六尺太鼓が眼前に彷彿である。坐っている椅子が揺れた。
     *
トーレンスのリファレンスとエレクトロボイスのパトリシアン800だけで、
瀬川先生の「永いオーディオ体験の中の1ページに書き加える価値のあるほどの」音が出たわけではない。
The Goldがあって、SG520があってこその「すごさ」であることが読みとれる。

もちろん前橋氏の感覚があってのことはいうまでもない。

それでもThe Goldがなかったら……、
そんなことを思っていた。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]