オーディオ入門・考(Casa BRUTUS・その2)
(その2)を書くつもりはなかった。
Casa BRUTUSの紹介だけをしたかった。
できれば多くの人にCasa BRUTUS 200号を手にとってもらいたかっただけである。
なのに、こうやって(その2)を書き始めているのは、
facebookにもらったコメントを読んだからである。
読みながら思い出していたのは、瀬川先生のリスニングルームのことだった。
いま別項で「ステレオサウンドについて」を書いている。
53号について書き始めたところだ。
このころのステレオサウンドには「ひろがり溶け合う響きを求めて」の連載が載っている。
瀬川先生の新しいリスニングルームについての詳細である。
それまでの部屋とは大きく違う。
広さが違う。天井の高さも違う。
床の材質とつくり、壁は本漆喰と、
それまでのリスニングルームと、いわば箱の状態で比較すれば、
それは圧倒的に新しいリスニングルームが優っている。
ふたつの部屋のどちらを選ぶかと言われれば、誰だって新しいリスニングルームを選ぶ。
それでも新しいリスニングルームは、最後まで仕事場としての雰囲気が残っていた。
残っていた、というよりも、仕事場の雰囲気が支配していた。
ここがそれまでのリスニングルームと大きく違う。
それまでのリスニングルームも、仕事場を兼ねていたはずなのに、
そこは瀬川先生の、もっといえば大村一郎氏のプライベートな空間であり、
その雰囲気が色濃かった。
それが新しいリスニングルームからは、
そこに住まわれたのが三年ほどと短いことも関係してだとはわかっていても、
何か欠けている雰囲気が、払拭されずだった。