素朴な音、素朴な組合せ(その25)
アルカイック(archaïque)、
古拙な。古風な。アーケイック。[美術発展の初期の段階、特に紀元前七世紀から紀元前五世紀頃の妓社美術についていう。生硬・峻厳・素朴・生命力のたくましさなどをその様式的特色とする]
と大辞林にある。
子項目としてアルカイックスマイルがある。
古典の微笑。ギリシャの初期の彫刻に特有の表情。唇の両端がやや上向きになり、微笑みを浮かべたようにみえる。
と説明されている。
シングルボイスコイルのフルレンジスピーカーを聴いても、
私の耳は日本製のユニットよりも、海外製のユニット、
特にフィリップスのユニットの音に惹かれてしまう理由についてあれこれ考えていて、
長々と言葉を費やして説明するよりも、
何かぴったりくる言葉がないだろうかと考えていた。
私が20代までに聴いたフルレンジは、素朴といえる音をもっていた。
その中でも、フィリップスのユニットは、アルカイックな音といえる要素がある。
マルチウェイのスピーカーシステムではなく、フルレンジユニットである。
しかも同軸型ではなくシングルボイスコイルのフルレンジユニットである。
フレームも磁気回路も物量を投入したつくりではない。
コーン紙も特殊な素材を使っているわけではない。
真似をしようと思えばすぐにも真似できそうなつくりであっても、
出てくる音は誰にも真似ることのできないアルカイックな表情が、
フィリップスの当時のユニットにはあった。