柔の追求(その11)
ステレオサウンド 72号の特集「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」で、
朝沼予史宏氏はアクースタットのModel 1+1のところで、こう書かれている。
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70年代中期以降、米国のハイエンドのオーディオシーンは静電型をはじめとするダイボール型スピーカーが牽引してきた感があるが、アクースタットの占める位置は実に興味深い。
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ダイボール(dipole)型と呼ばれるスピーカーは、前面と後面に等しく音を放射する。
厳密にいえばQUADのESLの前面と後面の音は等しいとはいえない。
実際のESLを分解してみれば、すぐにわかることである。
それでもコーン型ユニットの後面の音をエンクロージュアで囲ってしまったり、
ドーム型、ホーン型といった方式と比較すれば、QUADのESLも充分ダイボール型といえる。
確かにアメリカでは1970年代中期以降、マグネパンも登場しているし、
インフィニティもこのころはトゥイーターにウォルッシュ型を使い、
水平方向の無指向性を確保している。
ハイルドライバーのオリジネーターといえるESSのamt1もトゥイーターはダイボール型である。
1980年代にはいり、オールリボン型のアポジーが登場する。
このスピーカーもダイボール型である。
ただしリボン型トゥイーターの場合、多くは磁気回路でダイアフラムの背面をふさいでいるため、
ダイボール型にはなっていないものも多い。
パイオニア、デッカ、ピラミッドのリボン型、テクニクスのリーフ型がそうである。
ダイボール型が音場感豊かな音聴かせてくれる──、
そう思いこんでいる人はけっこういるようだ。
そういう人たちの中には、音場感の豊かさと音場再現を混同している人も少なくない。
私はそう感じることがけっこうある。
ダイボール型が得意とするのは、音場感なのか音場なのか。
これについては、あえてここでは述べない。
ここで書いておきたいのは、
ダイボール型には後面の音が前面の音と同相のものと逆相のものがある、ということだ。