ステレオサウンドについて(その45)
ステレオサウンド 49号には、附録がついていた。
表紙写真傑作集としての1979年のカレンダーだった。
附録がついていて、1600円の定価はそのままだった。
カレンダーのコストがどれだけかかっていたのかはわからないが、
49号の誌面にカラーページが少ない理由のひとつには、このカレンダーがあるはずだ。
ただ、それでも……、と思う。
カレンダーは197号にも附録としてついていた。
197号にカラーページが少なかったということはない。
特集にはカラーページがたっぷりと使われている。
内容はステレオサウンド・グランプリ(つまり賞)である。
49号と197号。
定価も含めて比較してみると面白い。
49号の原田勲氏の編集後記には、賞という文字は登場しない。
*
もしもオーディオコンポーネントの高級品がこの世から全く消え去ったら……オーディオファイルにとってそれこそ闇だ。これはオーディオに限らない。どんな趣味であれ、優れた道具の持味はその趣味の感興を高める。そのことから〝趣味は道具につれ、道具は趣味につれ〟と言えなくもない。
今回選定した〝ステート・オブ・ジ・アート〟の狙いは、オーディオコンポーネントにおける道具の理想のあり方を、実際の製品を通して語ろう、というところにある。無論、現実の製品が理想を実現しているというわけでは決してないが、少なくとも、「ステレオサウンド」誌の考えている、望ましいコンポーネントのありようは提示されているとおもう。
*
STATE OF THE ARTという日本語には訳しにくい言葉をあえて選んで使ったのは、
当時編集長であった原田勲氏のはずだ。
何度でも書くが、STATE OF THE ART賞が現在のステレオサウンド・グランプリの始まりであり、
名称だけでなく、ずいぶんと変質してしまった、と思ってしまう。