オーディオ入門・考(その12)
オーディオの入門用として最適の組合せとは、どういうことなのか。
「BBCモニター、復権か(その15)」で書いたことを、ここでも考えている。
菅野先生が、ステレオサウンド 70号の特集の座談会でいわれたことである。
特集・Components of the yearの座談会で、ダイヤトーンのDS1000について発言されている。
《スピーカーというのは、ものすごく未完成ではあるけれど、
ものすごく完結していなくては困るものだと思うんです。》
スピーカーをオーディオコンポーネント(組合せ)と置き換えてみる。
《組合せというのは、ものすごく未完成ではあるけれど、
ものすごく完結していなくては困るものだと思うんです。》
音の入口から出口まで、ひとつのブランドで統一することはできても、
オーディオマニアは、いわゆるワンブランドシステムに、どこかお仕着せ的なものを感じてしまうのかもしれない。
出てくる音が大事なのだから、誰かとまったく同じになるワンブランドシステムでも、
他の人には出せない音を出せれば、それが求める音であればけっこうなことのはずなのに、
そうは思えない人種がオーディオマニアだとすれば、私はまさにそうである。
ワンブランドシステムと、他社製品を組み合わせたシステムとであれば、
前者のほうが完成度は高い、といえることがある。
音だけでなく、アピアランスも揃うだけに視覚的なまとまりという点でも、
ワンブランドシステムには、そこにしかない良さを持っている。
この項で書いている瀬川先生が、ステレオサウンド 56号で提案された組合せ。
KEFのModel 303(スピーカーシステム)に、サンスイのAU-D607(プリメインアンプ)、
パイオニアのアナログプレーヤーにデンオンのカートリッジ。
組合せの価格は約30万円。
このクラスは、力のあるメーカーがワンブランドシステムをつくりあげれば、有利な価格帯のような気がする。
にもかかわらず、瀬川先生の組合せに感じた(いまも感じている)魅力は難しい、と思ってしまう。
《組合せというのは、ものすごく未完成ではあるけれど、
ものすごく完結していなくては困るものだと思うんです。》
瀬川先生の組合せは、まさにそうだと思う。