Date: 4月 2nd, 2016
Cate: ステレオサウンド
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ステレオサウンドについて(その37)

五味先生は「続・五味オーディオ巡礼」の後半、こう書かれている。
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 JBLでこれまで、私が感心して聴いたのは唯一度ロスアンジェルスの米人宅で、4343をマークレビンソンLNPと、SAEで駆動させたものだった。でもロスと日本では空気の湿度がちがう。西洋館と瓦葺きでは壁面の硬度がちがう。天井の高さが違う。4343より、4350は一ランク上のエンクロージァなのはわかっているが、さきの南口邸で「唾棄すべき」音と聴いた時もマークレビンソンで、低域はスレッショールド、高域はSAEを使用されていた。それが良くなったと言われるのである。南口さんの聴覚は信頼に値するが、正直、半信半疑で私は南口邸を訪ねた。そうして瞠目した。
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この部分を読んで、やっぱりそうなのか、と思っていた。
そうなのか、と思った部分は、アンプのところだ。
マークレビンソンのLNP2とSAEのパワーアンプ、とあるところだ。

SAEの型番はわからないが、勝手にMark 2500だろうと思っていた。
LNP2とMark 2500で、JBLの4343を鳴らす──、
この時代のステレオサウンドを読んできた人ならば、それは瀬川先生の組合せと同じであることに気づく。

組合せだけで音は決まるわけではないことは重々わかった上で、
そうなのか、と思っていたし、
なにか五味先生と瀬川先生の共通点のようなものを感じとろうとしていたのかもしれない。

南口重治氏の4350Aの音は、どう変ったのか。
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 プリはテクニクスA2、パワーアンプの高域はSAEからテクニクスA1にかえられていたが、それだけでこうも音は変わるのか? 信じ難い程のそれはスケールの大きな、しかもディテールでどんな弱音ももやつかせぬ、澄みとおって音色に重厚さのある凄い迫力のソノリティに一変していた。私は感嘆し降参した。
 ずいぶんこれまで、いろいろオーディオ愛好家の音を聴いてきたが、心底、参ったと思ったことはない。どこのオートグラフも拙宅のように鳴ったためしはない。併しテクニクスA1とスレッショールド800で鳴らされたJBL4350のフルメンバーのオケの迫力、気味わるい程な大音量を秘めたピアニシモはついに我が家で聞くことのかなわぬスリリングな迫真力を有っていた。ショルティ盤でマーラーの〝復活〟、アンセルメがスイスロマンドを振ったサンサーンスの第三番をつづけて聴いたが、とりわけ後者の、低音をブーストせず朗々とひびくオルガンペダルの重低音には、もう脱帽するほかはなかった。こんなオルガンはコンクリート・ホーンの高城重躬邸でも耳にしたことがない。
 小編成のチャンバー・オーケストラなら、あらためて聴きなおしたゴールド・タンノイのオートグラフでも遜色ないホール感とアンサンブルの美はきかせてくれる。だが大編成のそれもフォルテッシモでは、オートグラフの音など混変調をもったオモチャの合奏である。それほど、迫力がちがう。
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この音がどうだったのかを、何度も読み返しては想像していた。
南口重治氏の音を想像するには、そのころの私にはとにかく読むしかなかった。
記憶せんばかりに読み返した。

《気味わるい程な大音量を秘めたピアニシモ》、
この部分を、とくに想像していた。

いったいどういう音なのだろうか、どういうレベルの音なのだろうか、と。
同時に、五味先生への信頼も増していた。

五味先生はタンノイのオートグラフを、マッキントッシュのC22とMC275で鳴らされている。
高能率のスピーカー(ラッパ)を真空管アンプで鳴らす。

五味先生はオーディオ愛好家の五条件のひとつとして、「真空管を愛すること」とされている。
ステレオサウンドに以前に書かれていたことだし、「五味オーディオ教室」にも載っていた。

47号でも、こんなふうに書かれている。
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ヴァイオリンの合奏は、ただ高音が鳴ればいいというものではない。あの飴色の胴をした一挺一挺のヴァイオリンが馬の尻尾に擦られて調和を響かせねば、ユニゾンとはいえまい(高音をここちよく鳴らすだけならシンセサイザーでこと足りるのである。そして矢鱈シンセサイザー的ヴァイオリンがちかごろ多すぎる。いいトランジスター・アンプで、トゥイーターをうまく鳴らした時ほどそうだから皮肉な咄だ)。
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その五味先生が、南口重治氏の4350Aの音、
つまり高能率のラッパを真空管アンプで、というありかたとは違うありかたのシステムの音に、
《感嘆し降参した》と書かれている。

オーディオマニアの中には、五味先生のことを古いシステムに固執している人と捉えている人がいる。
新しい音を認めない人だ、と思い込んでいる人がいる。

そんなことはないのだ。

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