何を欲しているのか(続・兵士の物語)
ストラヴィンスキーの「兵士の物語」に出てくる──、
一つ幸せなことがあればぜんぶ幸せ
二つの幸せは無かったのと同じ
──だと。
一つの幸せ、二つの幸せということは、
つまりは幸せを欲している、ということではないのか。
幸せになりたい、と思う(願う)。
そして、ある幸せを手に入れる。
そこで感謝する。
けれどしばらくすると、もうちょっとだけ幸せになれたら、と思う(願う)のが、
欲するということなのだろうか。
ここで、本当に欲しているのはなんなのだろうか。
ロマン・ロランがベートーヴェンをモデルとしたといわれている「ジャン・クリストフ」、
その中でもっとも有名なのに、
《人は幸せになるために生まれてきたのではない。自らの運命を成就するために生まれてきたのだ》がある。
ロマン・ロランらしい、とも思えるし、ベートーヴェンらしいとも思える。
ここには一つの幸せも二つの幸せもない(のか)。
ここでは、何ものも欲していないのか。