世代とオーディオ(ガウスのこと・その13)
デンオンのSC2000は、1986年に登場したスピーカーシステムである。
にもかかわらず、何も知らない人が、このスピーカーを見たら、もっと以前のスピーカーと思ってしまうほど、
垢抜けていないと思わせるところがある。
以前のスピーカーシステムは、フロントバッフルが側板、天板、底板よりも一段奥まっていたのが多かった。
サランネットを装着した状態で、側板などと面が揃うようにすることも関係していた。
いわゆる額縁スタイルのエンクロージュアである。
けれど1980年に入れば、音場の再現性にとってバッフルが奥まっていては不利ということで、
額縁スタイルのスピーカーシステムは登場しなくなっていた。
そこにSC2000は、そのスタイルで登場した。
これは搭載している同軸型ユニット3588のホーンとの兼ね合いからきている。
搭載ユニットを真横からみればすぐにわかるようにホーンが突出しているため、
フロントバッフルが側板などと面が揃うようにすると、
サランネットがホーンの突出分だけさらに厚みを増すようになってしまう。
SC2000のサランネットは側板や天板よりも少し前に出ている。
これがもっと前に出てしまうと、
サランネット装着時のエンクロージュアとサランネットのバランスが崩れてしまうだろう。
SC2000のデザインを担当した人は、それを避けたかったのであろう。
とはいえ、もっと知恵を絞ってほしかった、とも思ってしまう。
SC2000は、井上先生によると二年間の開発期間を経て製品化されている。
これだけの時間があったにも関わらず、なんとも安易な……、と感じてしまう。
それはサランネットだけではない。
バッフル板の色もそうだ。
なぜ、この色を選んだのだろうか、と、SC2000を最初見た時も、そしていまも思っている。
サランネットの布地の色の選択にも、そう思う。
もっといえばサランネットの下の方に銘板がるある。
その位置、大きさも、なんだろうなぁ……、と感じていた。
SC2000が力作なのはわかっている。
けれど、スピーカーシステムとして捉えた時に、ちぐはぐさを感じるし、
安易な部分も感じとれてしまう。
だからだと思うのだが、ステレオサウンド 81号で山中先生は、こういわれている。
《ずいぶん注意深く作ってはいるんだけど、形がね。昔、秋葉原で売っていたのと同じ感じですからね。》
菅野先生は
《この形ではね。よし、いい音で鳴らしてやろうという意欲が起きないですよ》と。
こじつけといわれようと、
この形のまずさが、音のプロポーションのよくないことへ関係しているはずだ、といいたくなる。