世代とオーディオ(ガウスのこと・その6)
瀬川先生が、以前こんなことを書かれていた。
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エンクロージュアの板の厚さは、厚ければ厚いほど良いというようなものでもない。どれほど厚くしても、板材はスピーカーの駆動エネルギーによって振動する。板が厚ければ振動しにくいが、一旦振動をはじめるとなかなか抑えにくい。それよりも、ほどよい厚さの板に、適切な補強を加えて振動を有効に制動する方がよい。
欧米の著名メーカーのスピーカーシステムの多くが、板厚は3/4インチ(約19ミリ)近辺を採用している点は参考になる。近年、JBLのプロ用が1インチ(約25ミリ)に板厚を増したが、アマチュアが大がかりになることをおそれずに試みるにしても、30ミリ以上にするのはよほどの場合と思ってよさそうだ(もっとも、わたくしは以前、なかばたわむれに、板厚=使用ユニット口径の1/10説、をとなえたことがあった。たとえば30センチ口径=30ミリ、20センチ口径=20ミリ……。しかし38センチ口径となるとたいへんだ。わたくしは本当に38ミリ厚の箱を作ったけれど)。
(ステレオサウンド別冊 HIGH-TECHNIC SERIES-4「フルレンジスピーカーユニットを生かすスピーカーシステム構成法」より)
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板厚=使用ユニット口径の1/10説。
25cm口径までなら実現はそう難しくないけれど、それ以上の口径となるとたいへんである。
それでも瀬川先生は一度は38mm厚のエンクロージュアを作られている。
《なかばたわむれに》とは書かれているが、
これは《なかば本気で》ということでもあろう。
ユニットの口径が増せばバッフルに開ける穴は大きくなる。
大きくなければバッフルの強度は落ちるし、
一般的にいって口径が増せばユニットの重量も増していくのだから、
バッフルの強度を十分に確保するためには口径とともに板厚が厚くなっていく。
38cm口径に38mm厚のバッフル。
一度は聴いてみたい、と思うが、同じ38cm口径のユニットでも、
JBLとガウスとでは重量に約4kgの差があるわけだから、
JBLの38cm口径に十分な板厚であったとしても、
ガウスのユニットに対しては必ずしも十分とはいえなくなるかもしれない。
こんなことを考えるのは、
ステレオサウンド 54号の特集に登場したガウス・オプトニカのCP3820の試聴記を憶えているからだ。