世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その5)
ステレオサウンド 72号で、菅野先生がオンキョーのGS1をどう書かれているかは、
“the re:View (in the past)“で全文を公開しているので、興味ある方はお読みいただきたい。
とはいえ、一部だけ、最後のところだけを引用しておく。
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しっとりと鳴る弦、リアリティに満ちたピアノの音色の精緻な再現、ヴォーカリストの発声の違いの細部の明瞭な響き分け、たった一晩のグランセプターとのわが家におけるつき合いであったが、このスピーカーはそんな正確な再生能力に、しっとりと、ある種の風格さえ加えて鳴り響いた。
このわずかのつき合いの間に、私は、このスピーカーを欲しくなっている私自身を発見した。ただ、せっかくの仕上げの高さにもかかわらず、あの〝グランセプター〟のエンブレムはいただけない。前面だけならまだしも、サランをはずした時にはホーンの開口部にまで〝ONKYO〟と貼ってある。このユニークな傑作は誰が見てもオンキョーの製品であることを見誤るはずがない。本当はリアパネルだけで十分だ。エンクロージュアやホーンと看板とをごちゃまぜにしたようなものだ。
私がこのシステムを買わないとしたら、このセンスの悪いブランドの誇示と、内容からして決して高いとは思わないが、とにかくペアで200万円という大金を用意しなければならないという理由ぐらいしか見つからない。
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エンブレムに関してだけは注文をつけられているが、
肝心の音に関しては、絶賛に近いといえよう。
なにしろ《わずかのつき合いの間に、私は、このスピーカーを欲しくなっている私自身を発見した》
とまで書かれている。
72号の記事では、菅野先生の一万字を軽くこえる本文とともに、
写真の枚数も少なくない。
その中に「グランセプター開発の歩み」として、14枚の写真が載っている。
数々の試作品の写真である。
20以上のホーンが写っている写真がある。
この写真の下には、《これでも全数の何分の一かにすぎない》とある。
また別の写真には大理石の中高域ホーンがある。
この写真の下には、こうある。
《某雑誌の編集長の発言がもとで、大理石のホーンを作ってみたこともある。
しかし固有の音色があるのと、あまりにも高価になりすぎるため結局あきらめざるを得なかったという。》
あえて書くまでもないだろう。
某雑誌とはステレオサウンドのこと、編集長とは原田勲氏である。
オンキョーGS1は、翌73号にも登場している。
この項の(その1)にも書いたComponents of the years賞である。
GS1はステレオサウンド 71、72、73と、
さらに74号の特集「ベストコンポーネントの新研究」でも菅野先生が取り上げられている。
つまり四号続けてカラーページに登場することになる。