2015年ショウ雑感(日本のオーディオ、これから・その6)
感じただけで、実際にAPM8の音を聴くことはできなかった。
それもあってだろう、いつしか忘れてしまっていた。
思い出したのはダイヤトーンのDS10000を聴いたときだった。
五年が経っていた。
ダイヤトーンのDS10000はDS1000をベースにしていることはすでに書いた通りだ。
DS1000の音は、私にとっては井上先生がステレオサウンドの試聴室で鳴らす音とイコールである。
何度かのその音を聴いている。
DS1000の良さは、だから知っている。
ちまたでいわれているような音とは違うところで鳴る音の良さがある。
当時DS1000の評価は、すべての人が高く評価していたわけではなかった。
うまく鳴っていないケースも多かったというよりも、
うまく鳴っていないケースのほうが多かったらしいから、それも当然である。
それでも高く評価する人たちはいた。
誰とは書かない。
この人たちは、どれだけうまくDS1000を鳴らしたのだろうか、と疑問に思ってもいた。
それこそ聴かずに(少なくとも満足に聴かずに)、試聴記を書いているではなかったのか。
DS10000が出た。
価格はDS1000の三倍ほどになっていたし、
エンクロージュアの仕上げも黒のピアノフィニッシュになっていた。
専用スタンドも用意されていた。
音質的に配慮されたスタンドだということはわかっていても、
このスタンドに載せたDS10000の姿は、あまりいい印象ではなかった。
なんといわれていたのかはいまでも憶えているが、
いまもこのスピーカーシステムを愛用している人はきっといるはずだから、そんなことは書かない。
でも、DS10000から鳴ってきた音を聴いて驚いた。
DS1000の音はしっかりと把握していたからこそ、
そこでの「どこにも無理がかかっていない」と思わせる鳴り方に驚いた。
そして黒田先生のAPM8の試聴記を思い出してもいた。