簡潔だから完結するのか(その3)
同時代に同じことを考えている人は三人いると思え──、ということは、
少なくとも三人はいるということであって、
同時代に三人の人が同じデザイン・似ているデザイン(なにもデザインに限らない)を考えている。
同時代に三人いるということは、10年、20年……、もっと溯っていけば、
同じデザイン・似ているデザインを考えていた人はもっといるということでもある。
三人と書いたが、必ずしも三人とは限らない。
十人が同じデザイン・似たデザインを考えていることだってあるし、
十人よりももっと多くの人──、
百人、千人が同じデザイン・似ているデザインを考えていることだってありうる。
では千人が考えたデザインと三人が考えたデザインと、どちらが優れているのか。
それは同じデザイン・似たデザインを考えた人の数で判断できることではないはずだ。
同じデザイン・似たデザインから生れてきたデザインであっても、
千人の中のひとりが考えたデザインに対し、
他の999人が何もいえなくなるほど、つまり同じだ、似ているといわれないほど圧倒的であるのが、
デザインと呼べるモノではないのか。
シンプル(単純)と簡潔の違いは、そこだと思う。
簡潔なデザインにあって、シンプルなデザインにないのは、そういう力のはずだ。