ヴィンテージとなっていくモノ(その1)
1970年代のマークレビンソンの登場に匹敵するのは、
1990年代のワディアの登場のようにも思う。
ワディアの最初のモデルWadia 2000はアメリカで1988年夏に登場した。
日本に輸入されるようになったのは翌年からだった。
マークレビンソンのLNP2の成功は、多くの電子工学のエンジニアを刺戟した。
もちろんマークレビンソン以前にもガレージメーカーと呼ばれる規模のメーカーはあった。
それでもマークレビンソンの成功は、それ以前とそれ以降でのメーカーの数にはっきりと表れている。
CDは1988年秋に登場した。
最初はすべて一体型のCDプレーヤーばかりだった。
世界初のセパレート型CDプレーヤーはソニーとLo-Dから登場した。
つまり、この時、単体のD/Aコンバーターが登場した。
とはいうもののセパレートアンプとセパレートCDプレーヤーとでは、
組合せにおいて同じとは言い難かった。
セパレートアンプでは同じメーカー同士の組合せもあれば、
異るメーカーのコントロールアンプとパワーアンプもある。
自由な組合せが可能だったし、多くの人がそういった組合せを楽しんでいた。
けれどセパレートCDプレーヤーとなると、必ずしも同じではなかった。
その後もセパレートCDプレーヤーは登場した。
けれどアンプのような自由な組合せを楽しむという感じではなかった。
あくまでも同じメーカー同士のトランスポートD/Aコンバーターの組合せが聴くのが多かった。
というよりもほとんどすべてそうだった、といえる。
そういう状況をがらりと変えてしまったのが、ワディアの登場だった。
ワディア以前にも、単体のD/Aコンバーターを出しているメーカーはあった。
ワディアと同じアメリカのセータがそうだった。
1980年代、セータのD/Aコンバーターは、
アナログ用カートリッジの特性をシミュレーションできることを謳い文句にしていたこともあって、
少しばかりキワモノ的に見られていたのか、すぐには輸入元が表れなかった。
もっともセータがあのころ輸入されていたとしても、
ワディアほど話題にはならなかったし、その後に与えた影響もそれほどではなかったと思う。
ワディアの登場・成功によって、単体のD/Aコンバーターを出すメーカーがあらわれてきた。