ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その4)
AKGのK1000は、ステレオサウンド 95号(1990年6月発売)の新製品紹介のページに登場している。
菅野先生が担当されている。
K1000の音について、こう書かれている。
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今回のK1000はあえて前置きに長々と書いたように、オーストリア製にふさわしい製品で、その美しい音の質感は、決してスピーカーからは聴くことのできないものだ。特に弦楽器の倍音の独自の自然さとそこからくる独特な艶と輝きをもつ、濡れたような音の感触は、従来の変換器からは聴き得ない生々しさといってよいだろう。こうして聴くと、CDソフトには実に自然な音が入っていることも再認識できるであろう。生の楽器だけが聴かせる艶っぽさを聴くことのできる音響機器は、ヘッドフォンしかない(特に高域において)と思っているが、この製品はさらにその印象を強めるものだった。
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いま読み返して、K1000の音が聴きたくなってくるし、
瀬川先生がもしK1000を聴かれたら……、ということも想像してしまう。
K1000はステレオサウンド 97号で、Components of the years賞に選ばれている。
岡先生がこんなことを発言されている。
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岡 実はちょっとおはずかしい話ですが、ぼくは家で椅子に座ってこれを使っていて、そのまま眠ってしまった……。
柳沢 眠ってしまえるほど、装着の違和感がないってことですね。
岡 それほどヘッドフォンという感じがないんですよ。普通のヘッドフォンだったら眠れないですから。
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岡先生はすでに購入されていることがわかる。
どの記事を読んだからなのだろうか、
私にとってAKGのK1000といえば、岡先生が浮んでくる。
そして岡先生とスピーカーということでも、K1000が真っ先に浮んでくる。
たとえば瀬川先生ならば、真っ先にJBLの4343が浮ぶ。
菅野先生ならばマッキントッシュのXRT20だったり、JBLの3ウェイのシステム、
それにジャーマンフィジックスのDDD型ユニットが浮ぶ。
長島先生はジェンセンG610Bだし、その人の名前とともに浮んでくるスピーカーがはっきりとある。
岡先生の場合、私はなぜかK1000をまっさきに思い浮べてしまう。
岡先生のスピーカー遍歴は知っている。
にも関わらず岡先生とスピーカーということになると、K1000なのである。