スピーカー・セッティングの定石(その2)
コンクリートブロックのような例は他にもあるが、ひとつひとつ書いていくつもりはない。
定石はない、ということの例として書いたまでである。
そう書きながらも、まったく定石といえることはないのか、とも考えてしまう。
なにかひとつぐらいはあるのではなかろうか。
いまから40年ほど前にKEFからModel 105というスピーカーシステムが登場した。
30cm口径のウーファー、11cm口径のスコーカー、5cm口径のドーム型トゥイーターの3ウェイ。
このスピーカーシステムは、
ウーファーをおさめた、フロントバッフルが傾斜したメインエンクロージュアの上に、
スコーカーとトゥイーターをおさめたサブエンクロージュアがのるという、階段状の外観をもつ。
中高域のサブエンクロージュアは上下と左右に動かせるようになっている。
垂直は±5度、水平は±20度の稼働範囲をもっている。
トゥイーターとスコーカーの間にインジケーターがあり、
これを目安にして調整しやすいように配慮されている。
実をいうと、この可動範囲が、当時中学生だった私は疑問だった。
垂直(上下)の調整は理解できる。
聴き手が坐る椅子の高さ、それに聴き手の座高などが人によって違うのだから、
最適な位置を調整できるようにするのはわかる。
わからなかったのは、なぜ水平方向にも動かせるようにしているのか、だった。
この調整はスピーカーシステム本体の振りを動かすことで調整できるわけだから、不要なのではないか。
なぜ余分な機構をつけているのか、そんな疑問を持っていた。
この疑問はずっと持ちつづけていた。