岩崎千明氏のこと(アナログディスクの扱い・その3)
レコードジャケットに、適合カートリッジや最適針圧をメモしていて、一枚ごとにカートリッジを変え、針圧を再調整して聴くというマニアも知っている。その人はそういう作業がめんどうなのでなく逆にとても楽しいらしい。
一枚かけるごとに、針先のゴミをていねいに除き、レコードのホコリを拭きとりまるで宝ものを扱うようにレコードをかける愛好家もおおぜい知っている。だが私はおよそ逆だ。もしもそういう丁寧な人たちが私のレコードをかけるところをみていたら、びっくりするかもしれない。
レコードをジャケットからとり出す。ターンテーブルに乗せ、すぐに針を降ろす。レコードのホコリも、針先のゴミも拭きはしない。聴きたいと思ってジャケットを探し出したとき、心はもうその音楽を聴きはじめている。そういう人間にとっては、ホコリを丁寧に拭くという仕事自体、音楽を聴く気持の流れを中断させるような気がする。
*
上に引用した文章を読んで、岩崎先生が書かれたものと思われたかたもいるだろう。
だが、これは瀬川先生の書かれたものである。
1979年にステレオサウンドから出た「続コンポーネントステレオのすすめ」の中、
「良いカートリッジ条件」の最後に書かれている。