「正しい音とはなにか?」(ある違和感について)
すこし前に、昨年出来たビルの中にテナントとして入っているホテルに仕事で行った。
高級ホテルということだった。
内装は、そんな感じを漂わせている。
けれど、すぐに違和感をおぼえる。ここもそうなのか、と思う。
これは何も、このホテルだけのことではない。
いつのころからなのか(おそらく1990年にはいってからだろう)、
見た目の印象とそこでの音(人の話し声、靴音、その他のさまざまな音)の響き方に違和感をおほえる。
つまり見た目は重厚そうなのだが、響きがじつに薄っぺらい。
こういう建物の場合、壁や柱を叩いてみると、ポコポコといった、いかにもという感じの音がする。
表面は石なのだが、叩くとそんな音が返ってくる。
石が薄いからだけではない、
石が薄くともしっかりとした造りの柱、壁に取り付けられているのであれば、そんな音はしてこない。
おそらく薄い石の裏側はハニカム構造のアルミ材が裏打ちされているのだろう。
最初ハニカム材で裏打ちされた石を見た時は、
賢い人がいるものだと感心した。
こうすれば石は薄くできるし、強度も確保できる。
輸送、建築現場への搬入も重量が軽くなることのメリットは大きい。
施工する人にとっても軽くなることは負担が少なくなる。
だから、たいしたものだと思った。
けれどそんな素材による建築物が増えてくると、
見た目の印象と音の響きに違和感があることに気づく。
これはハニカム構造の素材で裏打ちしたデメリット、
それも数少ないデメリットであろう。
もっともこんなことはデメリットのうちに入らないのかもしれない。
それでも、この違和感に気付いている人は私だけではないことも知っている。
自分で調べたわけではないのではっきりした情報ではないが、
このハニカム構造を採り入れた石材は、あるデザイナーのアイディアときいた。
ならば、これはデザインということになる。
これは「正しいデザイン」なのだろうか、と疑問に思う。