「正しい音とはなにか?」(その4)
まだ10代だったころ、
自分のシステムのどこかを変え、音を聴く。
音の違いはわかる。
変える前と変えた後、どちらがいい音なのか、すぐに判断つくこともあれば、
どちらがいい音なのか、と迷うこともあった。
迷った時に考えた。
どういう判断をすればいいのだろうか、と。
そのとき考え出したのは、どちらがより違いを出すか、ということだった。
たとえば同じレコード(時代的にLPのことになる)でも、国内盤と輸入盤とがある場合、
その違いを、より自然に、はっきりと出してくれる音が、
少なくともそれまでよりも正しい音を出すようになったと判断していいのではないか、と考えた。
LPの製造国だけではない。
さまざまな違いを鳴らし分ける(響き分ける)ことができる音を、
どちらがいい音なのか迷った場合に選択していこうと決めたし、そうしてきた。
ステレオサウンドで働くようになり、様々な試聴の体験によって、
この考えは少し発展していった。
一枚のレコードにおいても、音楽はつねに変化している。
音色も変化していく。
そういう一枚のレコードの中での変化をきっちりと鳴らし分け(響きわけ)できる音は、
そうでない音よりも、正しい音といえるし、
聴感上のS/N比をよくしていった音も、聴感上のS/N比の悪い音よりも正しい、といえる。
この判断ポイントは、他にもいくつもあり、
そうやって音を判断してきた。
それでも、この「正しい音」は、初期の段階ともいえるし、基礎的な段階ともいえる。
1990年代、私は川崎先生の文章を熱心に読むようになっていた。
当時は、なぜ、そこまで熱心になれたのか、その理由について考えることはなかった。
読み続けるうちに考えるようになったのは、「正しいデザイン」ということである。