カラヤンのマタイ受難曲(その1)
カラヤン指揮によるバッハのマタイ受難曲は、
ふたつのCDが現在では入手可能である。
ひとつはドイツ・グラモフォンによる1972-73年にかけてのステレオ録音。
もうひとつは1950年のモノーラルのライヴ録音である。
1950年録音は、カスリーン・フェリアーが歌っているので、
アナログディスクでももっていた(ただし音はひどかった)。
CDになってからも購入した(まだこちらの方が音はまともになっていた)。
でもドイツ・グラモフォン盤は持っていないどころか、聴いたことがない。
聴こうと思ったことがなかった。
1970年代のカラヤンに対する、こちらが抱く勝手なイメージとマタイ受難曲との印象が異質な感じがして、
なんとなく聴く気がおきなかっただけが理由である。
けれどクラシック音楽における精神性と官能性、精神的なものと官能的なものは、
実のところ一体であって、不可分のものであることに気づけば、
カラヤンのマタイ受難曲(ドイツ・グラモフォン盤)に対しての興味がわいてくる。
このことは昔から気づいていたのかもしれない。
レクィエム(モーツァルトでもフォーレでもいい)において、
ある種の官能性が稀薄なものに関しては、名演といわれるものであってもさほどいい演奏とは感じてなかったからだ。