オーディオにおけるジャーナリズム(ウィルソン・ブライアン・キイの著書・その1)
新製品をはじめとするオーディオの最新情報が、創刊号当時にくらべて、一般のオーディオファンのごく身近に氾濫していて、だれもがかんたんに入手できる時代になったということも、これからのオーディオ・ジャーナリズムのありかたを考えるうえで、忘れてはならないと思うんです。つまり初期の時代、あるいは、少し前までは、海外の新製品、そして国産の高級機の新製品などは、東京とか大阪のごく一部の場所でしか一般のユーザーは手にふれることができなかったわけで、したがって「ステレオサウンド」のテストリポートは、現実の新製品知識を仕入れるニュースソースでもありえたわけです。
ところが現在では、そういった新製品を置いている販売店が、各地に急激にふえたので、ほとんどだれもが、かんたんに目にしたり、手にふれてみたりすることができます。「ステレオサウンド」に紹介されるよりも前に、ユーザーが実際の音を耳にしているということは、けっして珍しくはないわけですね。
そういう状況になっているから、もちろんこれは「ステレオサウンド」だけの問題ではなくて、オーディオ・ジャーナリズム全体の問題ですけれども、これからの試聴テスト、それから新製品紹介といったものは、より詳細な、より深い内容のものにしないと、読者つまりユーザーから、ソッポを向かれることになりかねないと思うんですよ。
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初めて読む人は、つい最近の発言かな、と思われたかもしれない。
これが載っているのはステレオサウンド 50号巻頭の座談会。
1979年の瀬川先生の発言である。
35年前のことが、いまを表している。
35年前よりもオーディオの最新情報はもっと氾濫している。
ここまで氾濫する世の中になるとは、瀬川先生も驚かれるはず。
スマートフォンを一台持っていれば、
いつでもどこからでもオーディオの最新情報(何も最新情報だけではなくうんと古い情報も)が得られる。
最近、頭から離れないのがウィルソン・ブライアン・キイの著書のタイトルだ。
一冊は「メディア・セックス」、もう一冊は「メディア・レイプ」。
本の内容よりも、タイトルが何度も浮んできている。