賞からの離脱(その46)
ステレオサウンドのState of the Art賞は49号から始まっている。
なぜ49号からだったのか。
それは50号のひとつの前の号だからである。
50号の表紙はマッキントッシュのMC275。
すでに製造中止になっているパワーアンプが表紙になっている。
MC275は、3号の表紙も飾っている。
ひとつの機種が、二回登場することは例がなかった。
33号と34号のプリメインアンプの特集ということで、
プリメインアンプが表紙になっている。
この二冊を見ると、仕上げが違うだけの同じアンプが続けて表紙になっているようにみえる。
どちらもアンプもケンブリッジオーディオの製品で、33号がP140Xで、34号がP70X。
このふたつのプリメインアンプはフロントパネルは仕上げが違うだけで同じである。
そういう例はあったけれど、M275だけが、表紙に二回登場した唯一の例である。
なぜ50号はMC275だったのか。
ここで思い出してほしい文章がある。
瀬川先生がステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」マッキントッシュ号に書かれたものだ。
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テストの最終日、原田編集長がMC—275を、どこから借り出したのか抱きかかえるようにして庭先に入ってきたあのときの顔つきを、私は今でも忘れない。おそろしく重いそのパワーアンプを、落すまいと大切そうに、そして身体に力が入っているにもかかわらずその顔つきときたら、まるで恋人を抱いてスイートホームに運び込む新郎のように、満身に満足感がみなぎっていた。彼はマッキントッシュに惚れていたのだった。マッキントッシュのすばらしさを少しも知らない我々テスターどもを、今日こそ思い知らせることができる、と思ったのだろう。そして、当時までマッキントッシュを買えなかった彼が、今日こそ心ゆくまでマッキンの音を聴いてやろう、と期待に満ちていたのだろう。そうした彼の全身からにじみ出るマッキンへの愛情は、もう音を聴く前から私に伝染してしまっていた。
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50号の表紙をMC275に決めたのは、間違いなく原田編集長(当時)のはずだ。
瀬川先生の文章から、MC275がどういう存在だったのかは伝わってくる。