名器、その解釈(Technics SP10の場合・その8)
テクニクスのEPC100Cといっしょに聴いた他のカートリッジの音は、
その特徴を一言で表そうと思えばできなくはない。
けれどEPC100Cの音は、そのカートリッジを特徴づけるであろう音のきわだった特徴、
つまりその部分において、他のカートリッジよりも秀でていると感じさせるところがないように感じる。
たとえばエラックのSTS455Eだと艶っぽさを色濃く出してくる。
これだけがSTS455Eの特徴ではないのだが、STS455Eの音を思い出そうとすると、
やはり艶ということがまず浮んでくる。
これはSTS455Eというカートリッジの特徴(音の良さ)でもある反面、悪さの裏返しでもある。
STS455Eはいいカートリッジであったし、私も買って常用していた。
けれど完璧に近いカートリッジというわけではない。
足りないところもだめなところもある。
けれど、ときとして、足りないところ、だめなところがあるから、
STS455Eの音の特徴ははっきりと浮び上ってくる。
このことは何もSTS455Eに限ったことではなかった。
他のカートリッジにもいえる。
けれどEPC100Cには当てはまらないような気がする。