TDK MA-Rというデザイン(その1)
ステレオサウンド 51号に東京電気化学工業の広告が載っている。
東京電気化学工業のブランドはTDKで、同社初のメタルテープ、MA-Rの広告だった。
MA-Rの広告を初めて見たのは51号だったのか、
そのころはFM誌も他のオーディオ雑誌(月刊)も買っていたから、ステレオサウンドではなかったかもしれない。
とにかくMA-Rの広告に載っていた写真を見て、どきっ、としたことはいまでもはっきりと憶えている。
トランスルーセントに、亜鉛ダイキャストのハーフ。
それまで見慣れていたカセットテープの印象とはまったく違っていた。
クリアーだった。
メタルテープの登場は少し前からオーディオ雑誌でも話題になっていた。
カセットテープの枠をさらに拡げただけでなく、
おそらくメタルテープの登場がエルカセットにとどめをさしたともいえる。
TDKはメタルテープの発売にあたって、まずMA-Rを、それからMA(通常のプラスチック製ハーフ)を出した。
他のメーカーであれば、逆だっただろう。
まずMAを出して、その上位版としてMA-Rを華々しく登場させる。
だがTDKは違っていた。
だからこそMA-Rは、いまでもその登場が印象に残っている。
こんなカセットテープはTDKのADくらいである。