真空管の美(その1)
「五味オーディオ教室」から始まった私のオーディオは、
真空管への興味も同時に始まった。
最初に憶えた真空管はKT88。
五味先生愛用のマッキントッシュMC275の出力管だからだ。
その次に憶えたのはF2a-11。
ただしこれに関しては型番だけであり、いったいどんな真空管なのか、
1976年当時、私は知ることができなかった。
それからいろいろな真空管の型番と形と特徴を憶えていく。
その過程で、まさに一目惚れした真空管はシーメンスの直熱三極管Edである。
無線と実験に伊藤先生が発表されたトランス結合・固定バイアスのプッシュプルアンプで、
Edの存在を知り、こんなに美しい真空管は他にない、と思ったほどである。
Edの存在を知る前に、アメリカに300Bという真空管があるのは知っていた。
熊本では、当時300Bの実物を見ることはできなかった。
写真ではよく見ていた。
アメリカの直熱三極管300Bとドイツの直熱三極管Ed。
見た目だけで判断すれば、圧倒的にEdの方が、いい音がしそうに思えた。
それにST管と呼ばれる真空管の形状が、
懐古趣味的真空管の形のようにも思えて、Edの形はそういう要素が感じられない、ということも、
私には大きかった。