素材考(カートリッジのダンパー・その3)
カートリッジの針先がレコードの外周方向にふれる。
もしダンパーに使われているゴムの反発力が強ければ、
すぐさま反対方向(レコードの内周側)に戻そうとする力が生じる。
これはカートリッジのダンパーとして、望ましいのだろうか。
ステレオサウンド 61号の長島先生の記事を読んで、そう考えるようになった。
実を言うと、それまではダンパーはカンチレバーを中央につねに戻すための機構だと考えていた。
ゴムが使われているのだから、そうだと思い込んでいた。
だがよくよく考えてみると、勝手にカンチレバーを中央に戻されては、
カートリッジの針先(つまりカンチレバーの先端)が溝を追従するのを邪魔することになる。
カンチレバーは、つねに溝に対して自由な動きをできるようになっていなければならないし、
ダンパーがその動きを妨げてはならない。
長島先生は「ゴムの分子間の結合が切れて、半分ヤレたゴム」という表現をされている。
こういうゴムの反発力は、新品のときよりもずっと低下している。
つまり長島先生がいわれる、オルトフォンのSPUがいい音がしてくる時期のダンパーは、
なかば反発力が低下している状態である。
一般的なゴムのイメージからすると、ゴムらしくない、ともいえる。
ここまで考えて、ダンパーとは、いったい何のためにあるものか、と考えるようになり、
そのためのダンパーとして求められる性質とは、どういうものなのか、に考えがいたるようになった。