Date: 8月 13th, 2014
Cate: Noise Control/Noise Design
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Noise Control/Noise Designという手法(その39)

ノーノイズCDのティボーは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第三番で、
このディスクについては、岡先生はステレオサウンド 88号に、次のように書かれている。
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 興味ぶかくかつ、問題にもなりそうなのはティボーである。一部のふるいティボー・マニアのひとが、これはききなれたティボーの音じゃないといったという噂もきいたことがある。高域がわりとのびて、やや冷たい感じがする。それがイントネーションの感じまで変えているのだが、考えてみると、われわれがSPでききなれたティボーの音の艶というのは、ひょっとしたら、SP特有のサーフェイスノイズに変調されて生まれた味わいではなかったのではなかろうかとも考えたくなるのだ。筆者はティボーのナマはきいたことは勿論ないし、最晩年の久しぶりの録音で、彼のトーン自体も20〜30年代のそれとちがってしまっていたのかもしれないという気がする。それにしても、このシリーズでいちばん謎を感じたディスクであることはたしかであった。
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ノーノイズCDで聴けるティボーの音は、たしかに聴きなれたティボーの音は違っていた。
私の場合SPでティボーを聴いた経験はなかった。
SPからLPへの復刻、CDへの復刻で聴いた経験しかなかったが、
それでもティボーの音の変化(変質といえるような気もする)は、感じとれた。

ノーノイズの処理技術が、この時点では完璧ではなく、
すべての録音に対して一定の効果が期待できるというようなものでもないことは、
このティボーのノーノイズCDを、他のノーノイズCDと比較するまでもなくいえることだが、
それでも他のノーノイズCDでの音の変化からすると、ティボーのノーノイズCDにおける音の変化は、
岡先生も指摘されているように、謎を感じる。

この時の私は、謎を感じながらも、それ以上考えることをしなかった。
このティボーのノーノイズCDの謎を思い出すのは、20年ほど経ってからである。

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