Noise Control/Noise Designという手法(その38)
1980年代後半にフィリップスから登場したノーノイズCD。
非売品だったサンプラーには、リヒァルト・シュトラウス指揮のベートーヴェンの交響曲第五番が、
ノーノイズ処理前と処理後の両方が入っていた。
これで聴きくらべると、ノイズは明らかに減っていることが認められるし、
細部の明瞭になっていることもはっきりとわかる。
アナログでは到底不可能な信号処理技術だということも実感できる。
この時点でのノーノイズの処理技術が完璧とは思わなかったが、
これから先有望な技術として、より進歩していくだろう、と思えた。
ノーノイズCDを聴けば、ステレオサウンド 50号に長島先生が書かれた文章を思い出した人もいることだろう。
創刊50号記念の記事として、「2016年オーディオの旅」というタイトルの、ひとつの未来予測である。
この中に、フルトヴェングラーのベートーヴェンの第五交響曲を聴くシーンがある。
しかも、そこでのフルトヴェングラーの演奏は、2016年の最新録音のように、申し分ない音で鳴った、とある。
旧いモノーラル録音のフルトヴェングラーのベートーヴェンを、
ステレオに変換し、波形の修復が加えられた、いわば復刻盤ではなく修復盤が、2016年には登場している。
1987年、フィリップスのノーノイズCDのサンプラーを聴いて、
そこへの一歩を踏み出している、と実感できるレベルにはあった。
このとき聴いたノーノイズCDで意外であり、謎のようでもあり、
いま思えば問い掛けであったのが、ティボーだった。