ハイ・フィデリティ再考(その7)
五味先生と高城氏の関係についてなにも知らなかっただけに、ここまで読んで「あれっ?」と思いはじめていた。
オムニ・ディレクショナルの音はどうだったのだろうか。
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さて、〝オムニ・ディレクショナル〟から鳴る引きしまった低音の豊満さと、その高域の清澄な美しさに私はびっくりした。とても同じ〝スーパー3〟の音とは思えないし、岡邸で聴かせてもらった高域とも比較しようもないくらい、よい音なのである。
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神様のように信奉されていた高城氏設計のコンクリート・ホーンという、ひじょうに大がかりなスピーカーよりも、
ワーフデールのオムニ・ディレクショナルのほうが、美しい音を出している。
この時点では、オムニ・ディレクショナルが、どのような仕様で、どんな規模のスピーカーであるのかは、
ほとんど不明だったが、それでもコンクリート・ホーンにくらべれば、
その規模はずっと家庭にすんなりおさまるものであろうことは、容易に想像できた。
ここまで読み進んで気がついたことがある。
ワーフデールについて書かれているページよりも70ページ前に書いてあることについて、だ。
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ヨーロッパの(英国をふくめて)音響技術者は、こんなベテランの板前だろうと思う。腕のいい本当の板前は、料亭の宴会に出す料理と同じ材料を使っても、味を変える。家庭で一家団欒して食べる味に作るのである。それがプロだ。ぼくらが家でレコードを聴くのは、いわば家庭料理を味わうのである。アンプはマルチでなければならぬ、スピーカーは何ウェイで、コンクリート・ホーンに……なぞとしきりにおっしゃる某先生は、言うなら宴会料理を家庭で食えと言われるわけか。
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某先生──、高城重躬氏のことだと気がついた。