「いい音を身近に」(その10)
黒田先生が、当時のラジオに耳を近づけて聴かれた理由は、音量に限りがあったからで、
同じ理由で近づいて聴くことが時として必要になるスピーカーシステムとしてQUADのESLがあろう。
旧型のESLは能率もそれほど高くはないし、
1970年代までのアンプでは満足にドライブできるモノが少ないこともあって、
十分な音量が得ることは難しいされていた。
私の経験では、SUMOのThe Gold級のパワーアンプをもってくれば、
それほど広くない部屋ではかなり満足感のある音量で再生は可能になるけれど、
それ以前のパワーアンプでは、高域でのインピーダンスが低下するコンデンサー型スピーカーに対して、
安定動作を求めることは厳しいことがあったのも、音量が得にくかったことに関係しているだろう。
当時のオーディオ雑誌を読めば、ESLである程度の音量感を得たいのならば、近づいて聴くといい、という記述がある。
岩崎先生も、このことを書かれている。
近づくことで音量感は増す。
それだけでなくスピーカーとの関係は、より緊密、密接になっていくのではなかろうか。
QUADのESLの裏側上部には、指をかけられるようになっている。片手でひょいと持ち上げられる。
なぜ、このようになっているのか。
頻繁に、というほどではないにせよ、ある程度の移動を考慮してのためであろう。