趣味のオーディオとしてのカタチ(その10)
「4343よりも4333の方が……」、
こんなことをいう人のスピーカーの鳴らし方はたいてい幅が狭い、とでもいおうか。
4343や4333のところをほかのスピーカーに置き換えてもいい。
とにかくこんな言い方をする人は多くはないけれど、少ないとはいえない。
しかもそういう人に限って、自分はスピーカーの鳴らし手として優れている、と思い込んでいる節がある。
けれど、私に言わせれば、こういう人のスピーカーの鳴らし方は、
少し極端な表現をすれば、ワンパターンである。
だから、幅が狭い、と書いた。
オーディオとは自分の好きな音を出すこと、だと、この手の人はいう。
自分の音を持っていなければ、いい音は出せない、と力説される。
このことを完全否定はしないけれど、はたしてそうだろうか。
彼は「自分の音」という幅の狭い鳴らし方に嵌っているだけのような気がしてならない。
ほんとうに優れたスピーカーの鳴らし手は、決してワンパターンな鳴らし方をしない。
瀬川先生がそうだったし、井上先生もそうだった。
あくまでもそのスピーカーシステムの個性・特性を活かしながら、うまいこと鳴らす。
もちろん、そこには瀬川先生ならではの音があり、井上先生ならではの音があるから、
そのスピーカーらしい、うまい鳴らし方であっても、決して瀬川先生が鳴らした音と井上先生が鳴らした音が、
同じになることはありえない。
私は車の運転はしないけれど、これは車の運転と同じなのではないか、と思う。