トランスから見るオーディオ(その22)
この、少し変ったトランスの使い方の効用について、池田圭氏は次のように書かれている。
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このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上の周波数特性とかひずみ率などの問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる。
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どんなに優秀な特性のトランスであっても、
トランスは何度も書いているようにバンドパスフィルターであるから、
測定上の周波数特性に関しては、トランスがないほうが優秀である。
それにインピーダンス変換ということについても、真空管アンプならばカソードフォロワーにするとか、
トランジスターアンプならばバッファーアンプを設けるなどすれば、
出力インピーダンスは低くすることができる。
コスト的にみても、優秀なトランスを採用するよりも、カソードフォロワーのほうが安く仕上るだろう。
コストを抑えられて性能も優れているとなると、トランスの出番は少なくなってくる。
しかもトランス・アレルギーの人が少なからずいるのだから。
録音系・再生系の信号ラインからトランスを排除していく。
それで、音が良くなるのだろうか。
池田圭氏も書かれているように、トランスには「音の味」が、
個々のトランス固有のものとしてあるし、トランスに共通していえるものとしてもあるように、
私も感じている。