100という数字(その4)
SPU-Synergyは磁気回路にネオジウムマグネットを採用している。
実は、この点もSPUシリーズの乱発とともに気にくわなかったところでもある。
ネオジウムマグネットが強力であることは、
スピーカーユニットに搭載されていることでも知ってはいても、
なんとなく「ネオジウムマグネットは優れた磁石です」という謳い文句を素直に信じられない。
どんな物質にもメリット・デメリットがあるわけだから、
ネオジウムマグネットの良いところばかり喧伝されているのを目にしてしまうと、
なんとなく眉に唾をつけてしまいたくなるところがないわけではない。
そんなわけで、SPU-Synergyの出力電力を計算してみたのは、
登場から一年以上は経っていた、もっとだったかもしれない。
0.5mVの二乗を2Ωで割る。
その値は125nWとなる。
出力電力100nWを超えるカートリッジが、オルトフォンから登場した。
しかもSPUシリーズの中からである。
99nWではなく100nWをはっきりと超えているどころか、
SPUの41.66nWの三倍以上の出力電力という高効率である。
電卓があれば数秒で終る計算なのに、SPU-Synergyが登場した時にやらなかった。
計算していれば、SPU-Synergyに対する見方もずいぶん変っていた。
登場時に気づけたはずのことを、一年以上経ってから気がつく。
何事も先入観はよくない──、このことをあらためて思い知らされた。
今後も、この100nWを超える出力電力は破られないだろう。
SPU-Synergyは、幸いいまも現役のSPUである。
まだまだこれから先も、SPU-Classicとともにずっと作り続けてほしいSPUであるし、
JBLのD130のパートナーとして考えているカートリッジが、このSPU-Synergyである。
高効率同士の変換器の組合せから得られる「音」がきっとあるはずだと信じているからだ。