「新しいオーディオ評論」(その3)
無線と実験、ラジオ技術にも新製品紹介のページはある。
無線と実験は巻頭のカラーページをあてているから、ラジオ技術よりも新製品紹介に力を入れている、といえよう。
ラジオ技術の新製品紹介は、ページ数が少ない。紹介される機種数もわずかである。
書店売りをやめる前からラジオ技術に載る広告の量は少なかった。
新製品紹介のページが少ないということは、このこととも関係があるはずだ。
この二誌は、数年間、新製品がどこからもまったく登場しない状況になったとしても、
特に誌面づくりに困ることはないだろう。
基本的にはどちらも技術誌であり、自作記事、それに関連する記事がメインであるからである。
だがこの二誌以外のオーディオ雑誌は、ありえない話とは言え、
もしそんな状況になってしまったら、どういう誌面をつくっていくのだろうか。
まず新製品がまったく登場しなくなれば、多くのオーディオ雑誌が年末の号で行っている賞、
それぞれに名称がつけられているが、ほぼすべてなくなることだろう。
これだけでも大きな変化である。
月刊誌ならば、賞の号は12冊出るうちの一冊だが、
季刊誌にとっては4冊のうちの一冊であり、大きな変化はより大きな変化となってくる。
新製品が登場しなくなれば、ベストバイにしても毎年やる必要があるだろうか。
ひとつひとつ具体的には書かないけれど、
オーディオ雑誌がこれまでやってきた企画を、
もし新製品がまったく登場しなくなったら、という視点から見てみると、
それらの記事が成立するための条件がはっきりとしてくる。
つまりは、無線と実験、ラジオ技術の二誌はオーディオ評論の割合が低いから、
特に大きな変化とはならないのに対し、
この二誌以外のオーディオ雑誌は、いわゆるオーディオ評論によって成り立っている、ともいえるし、
そのオーディオ評論、あえて、ここでは現在のオーディオ評論と限定するけれど、
オーディオ評論とはいったい何なのか、の問いを書き手、編集者だけでなく、読み手にもつきつける。