オーディオの公理(その1)
辞書(大辞林)には公理とは、
真なることを証明する必要がないほど自明の事柄であり、
それを出発点として他の命題を証明する基本的命題、
とある。
オーディオに、果して公理はあるのだろうか。
例えばCD(デジタル)は無機的で冷たい音がする、
アナログディスクはあたたかい音がする、
といったことが、いまもいわれ続けている。
これはオーディオの公理なのだろうか。
同じようなことでは、真空管アンプはやわらかくあたたかい音が特徴というのがある。
これはほんとうにそうなのだろうか。
証明の必要がないほど自明のことなのだろうか。
いまでは以前ほど口にされることは少なくなってきたけれど、
JBLはジャズ向きで、タンノイはクラシック向き、というのがある。
いまはそうではなくなったけれど、昔は、これは公理といえたのだろうか。
こういうことをひとつひとつ挙げていくと、数えきれないほど出てくる。
ターンテーブルは重いほどよい、
トーンアームは長いほどよい、
リニアトラッキング型が、一般的なトーンアームよりも理想に近い、
MC型カートリッジのほうが、その他の発電方式のカートリッジよりも緻密な音がする、
ローインピーダンスのMC型にはトランス、ハイインピーダンスのMC型にはヘッドアンプが向く、
信号ケーブルは短いほどよい、素材の純度は高いほどよい、
ステレオ構成よりモノーラル構成にしたほうがよい、
アルニコマグネットのほうがフェライトマグネットよりも音がよい、
……まだまだあるけれど、このへんにしておこう。
この中に、公理といえるものはあっただろうか。
オーディオに公理といえるものはあるのだろうか。